黒いチューリップ
アレクサンドル デュマ Alexandre Dumas 宗 左近 / 東京創元社
ISBN : 4488512011
チューリップこそオランダの誇り。
17世紀にオランダで起こった"チューリップ熱"。
ある種類のチューリップの球根一個と家一軒が同じ値段で売買される、そんな狂乱時代がオランダにはあったのです。
そんな時代のかの国では、いかにして黒い色のチューリップを作るか、皆鵜の目鷹の目。
そして、チューリップ作りこそ男子一生の仕事。
時の政変に巻き込まれて無実の罪で投獄されてしまう青年コルネリウスと、彼を助ける牢番の娘との恋を中軸に、物語は突っ走る。
コルネリウスはほぼ黒チューの栽培に成功していたその目前に、このような目にあってしまうわけで、その成功を密かに呪い、あわよくば黒チューを盗んでやろうという敵役もしっかり控えていて、それはやっぱりお約束。
子供の頃観ていた「ラ・セーヌの星」というアニメに、"黒いチューリップ"ってキャラが出てきたと思うんだけども。ま、それは置いとくにしても、私はこの「黒いチューリップ」と「快傑ゾロ」をどこかで間違えていたらしく、「で、チャンバラはいつ始まるのだ? 主人公はいつあの仮面で復活するのだ?」とずーっとずーっと待っていたんでした。
半分以上読んだところでやっと、あーそういう話じゃないんだと諦めた次第。ド阿呆です。
ド阿呆といえば、ヒーローであるはずのコルネリウスは"ド"が付くほどのチューリップマニア。
かわいい彼女よりチューリップのことばっかり考えています。
途中、「チューリップよりローザの方が大切だと気づいた」みたいなくだりがあるけど、そうは言いつつも、
しかし、ローザはなぜチューリップについて語るのを禁じたのだろうか。
それがローザの持つ重大な欠陥だった。
コルネリウスが溜息をつきながら心に思ったのは、
女性というものは完全でありえないのだということであった。
なんてお馬鹿なことを考えているあたり、根っからのチューリップマニアの改心度合いは甘い甘い。
大体コルネリウスは350ページに渡るこの本のほとんどを牢獄で過ごしてるんだけど、自力で何をなすわけでもなく、嘆くか待っているだけで、えーと、途中ちょっとだけ人を殴ってみますが、ストーリー上ちょっと暴れてみたという感じで。
やっていることといえば女の子を恋しく思ってやつれたり、チューリップを思って...(以下略)。
対してヒロインは歴史的な人物相手に渡り合って幸せを勝ち取る。そうして結局、ヒロインによってヒーローは黒いチューリップの栄光も取り戻せたし、牢獄からも解放されるのです。
自分で花嫁衣裳着て待ってるんだから、こいつは大物だわ。